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 『9坪の家 その後』 written by 萩原修


 08 2001/04/26 「家の原型はワンルーム?」


「壁化」という言葉をご存じですか?もちろん知らないですよね。
知っている人はきっと間取り展のカタログを熟読した人ですね。
「壁化」というのは、近代の日本のすまいの間取りの変遷を見ていく上で重要なポイントで、
ようするに室内の壁がどのぐらい増えてきたのかという話。
乱暴な言い方をすると日本のすまいの近代化は壁化であるともいえるらしい。
洋風化とともに、部屋をしきるものが移動可能な「ふすま」に変わって固定された「壁」になっていくわけ。
つまり個室化とも言える。

素人が間取りを考えるとき危険なのは、まずは必要な部屋数を確保しようとしてしまうことらしい。
やれリビングだ、ダイニングだ、寝室だ、子ども部屋だとなりがち。
土地がたくさんあってお金に余裕があろうものなら、その他、書斎に、家事室に、応接室に、
はてはAVルームとか、フィットネスルームだとか、昼寝室だとかありとあらゆる部屋をつくりたくなる。
つまり機能ごとに部屋を考えがちである。
しかし、普段の生活の中で何かやるごとにいちいち部屋を移動するなんてめんどくさい。
結局、たくさん部屋があるわりによく使う部屋は限られてくるのかもしれない。

吹き抜けで1階と2階がつながり、家全体が大きなワンルームとなっている9坪の家
吹き抜けで1階と2階がつながり、家全体が大きなワンルームとなっている9坪の家
撮影/村角創一
実は、ぼくも9坪の家に住む前までは、
当然のように部屋数は多ければ多いほどいいと考えていた。
実家にいるときは、カギのかかる自分だけの部屋があった。
結婚して、ふたりで住むようになり、自分だけの部屋がなくなった。
新婚のうちは、それでもよかったのだが、子どもが生まれ、なんとなく手狭に
思えて、「ああ、あとひと部屋、自分だけの部屋があったらなあ」なんて
考えるようになっていた。
しかし、9坪の家をつくることになり、そんな考えはどこかに飛んでいった。
なにせ、9坪の家の原型の増沢邸は、吹き抜けのある立体的なワンルームで、
壁は極端に少ない。壁でしきられた部屋をたくさんつくろうなんて考えようがない。
1階9坪、2階6坪、あわせて15坪、約50平米の床面積を効率よく、
狭苦しくなくするためには、風呂とトイレをのぞき、できるかぎり壁をつくらずに
ひとつの空間にしておく他ない。
結果的には、これが大正解だった。小さな家なのに、狭く感じないし、
立体的なワンルームの中で家族それぞれが、その時々で、
自分の居場所を見つけて、生活している。
家のすべてが共有スペースといえる。
考えてみると、竪穴式住居や遊牧民の住居にみるように、家はワンルームが原型なのだろうか。
どうせなら、最初から壁を固定せずに家族や生活の変化に応じて、移動できるしきりや家具などでその都度、
間取りを自由に変えられる方がいいのかもしれない。なんだか、簡単そうで難しい。
すべての人がすまいと生活との関係を一生考え続けていかなければいけないのだろう。
正解なんてないのだから、どうせ考えるなら楽しく考えたいですね。


 
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