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『家づくりの会 連載コラム』
057 狭小敷地・新たな住宅の可能性をさぐって
川口通正/川口通正建築研究所
建築家の仕事のスタンスは、人それぞれのやり方があるが、
その建築家が幼少期、青年期に育った地域環境や家庭環境に大きく左右される。
自分を振り返ってみても、そうだが、その建築家がすでに人間として持っている、
人々へ幸福を導きたい気持ちの「芽」がどう開くか、なのだと思う。
私の場合は、おそらく子供の頃からごみごみした街中で育ったので、
都会の道端に踏み潰されそうでいて、決して踏み潰されない小さな芽かもしれない。
それでもあるとき地面を見た誰かが見つけてくれて、その存在に気づいてくれる運のいい芽。
でも結構、粘り強く頑張る根っこがあるので、「真実の住宅」という花に向かっていく芽。
そのような「芽=可能性」を持ち続けたいと思って仕事をしている。
ここでは、私が行っている街中の狭小敷地での仕事のスタンスを書きたいと思う。
近年、私の事務所に依頼されてくる住宅の敷地で、面積が小さく限りある場合、
周辺環境が日照や通風、プライバシーの確保、防犯、自然の採り込みなどの点で、悪化していることが多い。
したがって快適な住宅を作ることに対して、ぎりぎりの苦戦を強いられる。
そのような条件下で建築の空間を考えるとき、光の採り入れを、常に上からの光に期待しなければ
住宅として機能せず、解決に結びつかないことが日常化している。
だから最近の仕事では、
各階の床レベルを変えて、垂直方向の天井高さに変化をつけることで
天空の光を獲得する手法を採用している。
私は天空の光を逆手にとって、垂直方向での光の強弱と陰翳とを利用して、空間に深みを出したいと考えている。
上からの光は上階から下階になるにつれて強さが弱まるので、光を生かす空間にそのことを利用する。
また壁面に直射光を当てて、その強さと量を考える。
そして壁面からの反射光を室内に採り込むことを忘れないで実行する。
街中の住宅の限られた空間の中では、垂直方向と水平方向の空間を突き抜ける視線を
確保することが最も重要である。
それによって内部空間に上下と左右の広がりを得ることができる。
そのことに自然光は欠かせない要素となるが、空間に翳りが強く出すぎると視界がはっきりせず、
あいまいとなり、奥行き感が減る。
また、全く翳りが無いと空間の距離感が明快にならず、単調になり、深みが現れず奥行き感が出ない。
空間における翳り具合と翳り場所によって、空間の豊かさは変わり、空間は変幻自在に変化する。
その採光方法の工夫こそ重要で、それがより良い形で実現すれば、
これからの街中の住宅における普遍的な光のスタイルとして定着させることができる。
それが最悪の環境と戦える大きな力となり、新たな住宅の可能性に結びつくと私は考えている。
川口通正/川口通正建築研究所
シンプルに清々と暮らせる、時代と調和した美しい家をつくりたいと思う。
そして日本古来の伝統とモダニズムが融合することを夢見ている。
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