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『家づくりの会 連載コラム』
036 空っぽ ― そこは、あらゆるものの出てくる源 ― その2
吉原健一/光風舎一級建築士事務所
設計依頼を受けたとき、機能・技術・素材・設備的な要望や希望に多くの時間を掛けます。
しかしそれ以上に、今までどういった暮らし方をしてきたのか・これからどのように暮らしていきたいのか・
ご家族にとって住まいをつくる意味は何なのか・周りの環境に与える影響は……など
住まいに対する思いや夢・意味を話し合います。
そんな話し合いの中から、ご家族の趣味や嗜好、ライフスタイル、家族の関係性、
ご近所との関係から旅先でフッと出会った心地良い場所・気持ち良いと思う風景・好きな音楽・本・映画……など
そのご家族や地域ならではの情報がでてきます。
オリジナルな価値観、それらを設計の拠りどころとし具体的な形にしていきます。
また、この「空っぽ」の部分には建築家の個性も現れます。
私は京都で生まれ町屋で育ちました。
切子格子・坪庭・光庭・ろぉーじ・通り庭・借景・光と闇・伝統と日々の暮らし……
町屋の「空っぽ」の部分には、このような精神的な豊かさが数多くみられます。
これらは私の原風景となっています。
また建築家を目指そうとしたとき、ヨーロッパ・中東・アジア・インド…様々な国の建築を訪ねて随分と旅しました。
最近でも機会があるごと、仲間が設計した建築や気になる建築を訪ねて出掛けます。
このような体験や積み重ねも、デザインという形で「空っぽ」の部分に現れてきます。
そして家づくりは、ご家族と建築家の共同作業です。
お互いを尊重し合い、ご家族が求められているイメージや夢を具体的な、
スケッチ・模型・図面・見積りに置換えていきます。
時間の掛かる作業です。
何度も納得ゆくまで描いたり消したり、つくったり壊したり、できるだけ先入観を持たないようにして
いろんなパターンやアイデアで図面や模型を検討していきます。
ご家族が求められているものが、建築家の感性やアイデア・技術で生かされ、
家づくりに対する思いが共有できたとき「空っぽ」の部分が満たされてくるのだと思います。
私たちは、肉体的であると同時に精神的な存在です。
家は単に機能的で使いやすく消費されていくといったものではありません。
肉体が快適な場所を欲するように、精神も自由な場所を欲します。
また私たちは、住まいは町の文化であり財産だと考えています。
もちろん家は個人的なものですが、周りの街並みや環境・社会に大きく影響をあたえます。
一つ一つの家が集まり街並みをつくり地域を形づくっていきます。
一つ一つの家や個人を考え抜くことで、偏狭な個人性を超え、より社会に根ざした存在となる可能性を持ちます。
雑誌やネットなどで家づくりの情報が手軽に入るようになり便利になりました。
しかしそれらが自分たちにとってどういった意味を持っているのか・本当に必要なものなのか……
物や情報に頼らず、自分たちにとっての家づくりとは何なのか、
自分たちの家が周りの環境や社会的に対し、どういった意味を持つのか……
今一度掘り下げて考えてみると、家づくりの可能性や楽しみも広がるのではないでしょうか。
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