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『家づくりの会 連載コラム』
036 空っぽ ― そこは、あらゆるものの出てくる源 ― その1
吉原健一/光風舎一級建築士事務所
「無之以為用」
老子のメッセージです。「空っぽ」こそ役に立つというような意味。
解説を読んでみると「例えば粘土をこねて器をつくるとき、器の中は空になっている。
この空の部分があってはじめて器は役に立つ。中がつまっていたら、何の役にも立たない。
また、どの家にも部屋があってその部屋は、うつろな空間だ。
もし部屋が空でなくて、ぎっしりつまっていたら使いものにならない。
うつろで空いていること、それが家の有用性なのだ。
私たちは物が役立つと思うけれど、じつは物の内側の、何もない虚のスペースこそ
本当に役立っているのだ。」とのことです。
私たちは設計作業を行うとき、この「空っぽ」の部分を大切にします。
建築の専門用語でいうと空間もしくは空間構成。もしくは間の取り方、隙間。
音楽にあてはめてみると音符と音符の間の空間。音楽は一つの一つの独立した音だけでは成リ立たず、
音と音の組み合わせ、間隔、強弱……などにより成立します。
そしてその扱い方により、聴く人を勇気付けたり、悲しい気持ちにさせたり、高揚させたり、……。
同じ音を使っても使う人・場所・時間……によってあらゆる種類の環境が生まれます。
家づくりにおいて空間構成とは、部屋と部屋の関係・動線の取り方・室内と外部との関係・
天井の低い所と高い所をどのように繋ぐか・近隣や地域環境とどう関係づけるか……
また、どのように光や風を取り入れ、どのような空気感を持たせるか、
「空っぽ」の部分をどのようなイメージで表現するか……。
素材・構造・断熱方法・バリアフリー・防犯・設備的なもの……などは技術的に解決できる問題です。
しかし「空っぽ」の部分は、ご家族がこれからどのように住まわれるか・
どのような空間が快適・心地良いと感じられるか・家と廻りの環境や近隣との関係性はどうなのか……
などと大きく関ってきます。
決められた答えはありません、システム化することもできません。
それぞれの家庭環境やライフスタイル・敷地環境を読み込み、創りあげていくものです。
いくら高価な素材・最新の便利な設備を取り入れても、この「空っぽ」の部分が豊かで満たされないと
心地良い住まいになりません。
つづく
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