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 『家づくりの会 連載コラム』


 034 建てることの意味を考える その2
…地断片化されているものを、よりよい形で統合するには…
安井正/クラフトサイエンス

ここで突然話が変わります。

この仕事をする数年前にインドに旅行に行きました。
インドのアーメダバードには「階段井戸」というのがあります。
地下数十メートルの地下水面まで降りていく階段が、荘厳に築かれた宗教的な施設です。
階段を降りきったところに水場があり、そこから上を見上げると、八角形にくり抜かれた筒状の空間越しに、
ぽっかりと空が望めます。

この階段井戸の空間を体験して、私は「井戸の意味」について認識しました。
井戸は生活のために必要な水を地下水から汲み上げるための物です。
しかし、それだけではなく、地球上の水の循環という大自然の営みと、
ある土地で暮らす人々の生活とを結びつける場所なのです。
自然と人間とのつながりを感知する場所、という意味があるのだと理解したのです。
また、「井戸端会議」という言葉があるように、井戸は地域の人が集まるコミュニティーの中心でもあり、
人々の交流の場所でもあるのです。

先の若い建主さんが、新たに土地を手に入れ、そこに住み着いていくという意味には、
私には井戸のイメージこそがふさわしいと思われました。
この吹抜空間が、人が集まり交流する中心的な場所としてはたらき、
一日を通じて変化に富んだ光がふりそそぎ、この家の家族の生活が自然とつながる場所でもあり、
時とともにこの土地に根付いていく場所となって欲しい……、
そんな想いから「光井戸の家」と名づけたわけです。

このように、「光井戸の家」の吹抜空間は、いくつもの設計の意図が何層にも重ね合わされてできているのです。
人が集まる場所をつくるという機能的なこと。
煙突効果によって通風を得るという技術的な工夫。
そして生活の中に美しい光を取り込みたいという美的な要求。
そういったことが相互に関係しあいながら一つの全体像をまとめあげるのが建築なのだと、私は考えています。

今の世の中、ものごとがますます断片化しているように感じられます。
断片をよりよい形で統合するには、もう一度突き放して、トータルに見てどうなんだ?
とその意味を問うてみることが大切なのではないでしょうか。


 
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