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 『家づくりの会 連載コラム』


 033 住宅なんでもQ&A(第11回)

笠原顕司/笠原顕司建築創作所

Q.私の家では私(=主婦)より主人の意見が強いんです。
今度建てる家の台所のことで私の思い通りになるかどうか心配です。
というのも、主人は設計は私に任せるから図面はちゃんと描いてもらいなさい、
とは言っているのですが、
工事は主人の知り合いの工務店に任せることを決めているようなので、
工事が始まってからは設計者にあまり頼らず、監理なんかあまり考えていないようなんです。
設計図通りに進めるのにいいアイデアはありませんか?

家づくりという中で誰が建主かという問題はとても大切ですが、
それぞれ使う場所によって家族の意見の「押し出し方」の強弱が違うのは当たり前で、
特に台所については奥さん、簡単には譲れないのはよく分かります。

台所はそれぞれの家庭により使い方、習慣などの違いがあり、
主婦の意見を尊重しないとうまくゆきません。

今は亡き女優の沢村貞子は「厨房」という随筆(彼女の著書「私の台所」からの引用)の中で、
次のように述べています。

「よく切れる包丁でトントントンと野菜をきざむ時の快さ‥‥‥
ちょっとした私のストレスはその音だけでスッと解消してしまう。
大勢の人たちに混じって仕事をすれば、とかく心にしこりが出来やすい。
そんなとき、帰るとすぐ着物を着替え、たすき前掛け姿で台所に立つ。
包丁を握るのは私の気晴らしの一つである。」

これはマナ板の上で食材をきざむだけでも日常のうさばらしになるということなのでしょうか。

夫や子供たちが料理をする家庭が増えても、やはりなんと言っても台所は主婦の砦なのですから、
人それぞれによって思い入れがあるのは当然です。

そういえばこんなことがありました。
私が以前設計したGさんの家の台所の場合も奥さんのこだわりがあり、
「台所だけはオープン型で、家族と顔を合わせて料理したいものです」という強い要望がありました。
Gさん夫婦は共働きで、奥さんのご主人への経済的依存が少ないようで、
ご主人は妻に家づくりを始めから任せきりにしていました。
しかしながら、ご主人も夫人の友人の建築家(=私)をさしおいて、
友人の大工さんに任せてさえいれば間違いないと思っていたのですが、
ある時思わぬ展開になってしまいました。
それは‥‥、
図面をあまり見たことがない大工さんは、こともあろうに日頃の自己流の習慣からか、
食堂と台所の間に間仕切りを作って閉鎖型のキッチンにしてしまったのです。
設計図は描いても監理まで頼まれていなかった私でしたが、
夫人からの「懇願」で現場に出向き大工さんの勝手な変更を見つけ、ご主人に指摘しました。
そこでご主人は初めて大工さん任せの危うさに気づき、それ以来私が監理することになり、
勿論台所は図面に忠実にやり直されたのです。

本当に危ないところでした。
日頃物静かな夫人ですが、対面式のキッチンについては雑誌などで研究を重ね、
大きな期待と夢を抱いていらっしゃいましたから、
大工さんの身勝手なやり方に怒り心頭で、たいそう憤慨されていました。

しかし、このときの夫人の押し出しの強さがあったからこそ、
その後のスムーズな家づくりになったと思っています。

さて、G邸のようなケースは希だと思いますが、こういうふうにならないようにするには、
あらかじめ工事に入る前に工事契約書に設計図や打ち合わせ書類を添付し、
さらに建主であるあなたも口頭で図面に従うよう繰り返しその友人の工務店に指示
すれば、
少なくとも設計図を無視されることは少なくなるはずです。

それでも経費を浮かせようと勝手な変更はつきもの。
それよりもなによりも最初から設計者に現場を見てもらうに越したことはありません。
危ない橋は渡らないことです。


 
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