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 『家づくりの会 連載コラム』


 028 「住宅」に音楽を奏でさせる為に その2
…加藤登紀子と王貞治の話を交えて…

野口泰司/野口泰司建築工房 

こうした風に関する「知識」があると、住宅を設計する時に庭のとり方、家の向き、開口の取り方、
開口の仕組みなどに有効な「術」を施すことが可能になります。

大地は巨大な「蓄熱体」であると言います。これは大地の持つ主要な特性の一つです。
これは前述の「知識」であります。これを「住宅」に生かす「基礎断熱」という「術」があります。
私が設計し、昨年の春竣工した八王子の〈木の家6〉T邸の例ですが、冬の気温下、
床下温度は15 ℃を示していました。蓄熱容量の大きい大地に接し、基礎断熱で守られた床下は
一日中あまり温度の上下がない筈です。
外気が朝方氷点下を示すことも多いこの土地で、これはなかなかの成果ではないのかと思いました。

私達の冬は「住宅」の開口部から降り注がれる太陽光のエネルギーに、基本的に依存しています。
太陽光を生かす素朴な「術」について、ある程度のことを多くの人は知っていますが、
もう一歩踏み込んで、より有効な「術」を学び「住宅」に取り入れることが時代の要請になっています。

開口部の方向や大きさから決まる取り入れられる総熱量、これを逃がさない為の「断熱」、
取り入れたエネルギーを夜にまわす為の「蓄熱容量」の大きさ、そしてこれらの相関関係。
そうしたことを学ぼうと、現在、家づくりの会の何人かで勉強会を進めています。
会の「部位別研究」という活動の一環として行われているものです。

加藤登紀子にかわって、現ダイエー監督、かつての名打者王貞治の話に一寸触れたいと思います。
これも大分昔になりますが……。
歴史に残る彼の「一本足打法」を科学的に分析したNHKの、確か一時間ほどの放送がありました。
構えたバットが弧を描き、球を捕らえるまでを徹底的に分析したもので、
「逆らわず、力を抜いて」振り下ろされる一瞬に秘められた気の遠くなるほど膨大な「合理的動作」の集積の
一コマ一コマを息を呑む思いで見たことを覚えています。
「住宅」も、「合理性」に裏付けられた先に述べた「知識」や「術」の集積があってはじめて、
豊かな音楽を奏で始めるのだなと感じています。
改めて「果てしない道のり」であることを再確認して筆を置くことにします。


 
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