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『家づくりの会 連載コラム』
026 家づくりを機に深く考えよう その1
坂東順子/J環境計画
家をつくる機会がもてる人は幸せだ。
家をつくる際には、生活の仕方や家族の関係をあらためて見直し、
自分や家族が社会とどのように関わっていくかを考えることになる。
将来の生活や人生のあり方といったことに直面する絶好の機会を得るわけだ。
一方で、家をつくらないという選択肢もある。私は住宅設計を生業としているけれど、
「……日々旅にして旅をすみかとす」という芭蕉の生き方にも魅力を感じる。
住まいを構えてそこに落ち着くという事は、社会的な信用や安定した生活を得ることに繋がる反面、
自由さや軽快さを制限することになる。
さらに現実にもどれば、家をつくったことで一生住宅ローンに苦しめられるようなことになりかねない。
まず、
身の丈にあった家
を、無理せず肩の力を抜いて計画すべきだ。
設計者としては予算にゆとりがあるほうが助かるが、建主には竣工後の生活を楽しめるだけの、
余裕ある資金計画を立てることを勧める。
家をつくるきっかけは人それぞれである。
遺産相続、結婚、二世帯同居、あるいは立ち退きなど、個別の事情がある。
誰にでもベストという計画はない。各人の家に対するこだわりは、個々に異なるはずだ。
だから、家をつくるときは、自分らしいやり方をするのがよい。
また、予算と同様に、竣工までにかけることのできる時間にも、制約があろう。
有限の時間をうまく利用してできるだけ密度を高めることが重要だ。
家を計画する際には、性能、デザイン、コスト、使い勝手などについて比較検討することになる。
これは、車を選ぶときに似ている。
しかし大きな違いは、家は買うものではなく、つくるものであるということだ。
工場で仕上げられるものではない。
さらに、家は敷地と対になって成り立つ。
個別の条件や性格を持っている敷地を最大限に活かす家をつくることが肝心だ。
また、要求される機能に関しても、シェルターとしてのハード面だけでなく、
生活を包み込むソフト面を重視しなければならない。
これら複数の、時として相反する要素を、いかにうまく組み合わせるかが設計である。
ここに、家づくりが設計者にゆだねられる所以がある。
施主のタイプも、設計者と共に細部までこだわる人、おおまかな要望のみを伝え設計者にすべてを任せる人など
様々だ。家づくりは、建主と設計者(と施工者)の協働作業であるから、相性のよい設計者を選び、
コミュニケーションをうまく取ることが、家づくりの成功の秘訣
といえる。
家づくりは、竣工後に我が家に愛着がもてるようなら、成功したと言えよう。
そして、住まいながら手を入れて慈しみ、愛着が年々増すような家が望ましい。
ところで、私は4年前に事務所名を「J環境計画」と改称した。
住むための箱を設計するのではなく、暑さ寒さや化学物質対策を考えた室内環境はもとより、周辺の環境、
さらに街づくりやエコロジーに配慮した生活を考え、かつ、感性に訴える家を設計することを心がけている。
最近の住宅の傾向で気になることがある。
建築基準法の改正(「シックハウス法」の施行)や高気密高断熱化を進めることで、
快適な環境を人工的につくりだそうとしている。
かつて日本では、人は暑さ寒さを肌で感じ、衣服の調節や窓の開閉で対応してきた。
自然や四季の移り変わりを五感で意識する暮らしだった。
もちろん、現代の便利な生活を全面的に否定するわけではない。
私達が、エネルギーに頼らずして暮らしていけないことは百も承知である。
が、もう少し人間が生まれながらに持っている自分自身で調節する力や、我慢する能力を大切にして、
もっと自然の摂理にかなった生活をすべきだと思う。密閉状態の中、冷暖房設備で年中同じ温湿度を保ち、
換気扇を回して快適な室内環境を維持することは、本来の住まいの姿ではない。
つづく
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