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 『家づくりの会 連載コラム』


 024 自分探しの家づくり その2

長谷部みどり/長谷部建築設計事務所

場所や環境は個々に違っても、感性に触れた「あの時」という宝物をいくつか持っていて
大切に育てているはずです。
心地良いと思った事、美しいと感じた事、楽しく過ごした思い出の風景など、
体で体験した感覚はきっと心の引き出しに入っているものです。

そういう大事な思い出の心の引き出しを忘れ、物の引き出しに翻弄されてしまうケースが多くなっています。
心の中の引き出しを開けずに「家づくり用品」として次々に用意される引き出しを開けても、
何が自分に必要なものかわからず、悩む家づくりとなってしまいます。
物の引き出しはこれからも増え続けます。
ダリの絵のような、キャンパスいっぱいにかかれた多くの引き出しの前に
迷える人が1人たたずんでいるといった構図です。
この構図を変えるのは、自分の心の中の引き出しです。

利便性や機能性、経済効率優先の大きな流れの中で個として立ち止まって考えるにはエネルギーが要ります。
新しい物や工法、考え方が出てきて最良とされたことが短いサイクルで不確実になる事もあります。
だからこそ1つ1つの取捨選択をする時、感覚を研ぎ澄ませて判断しなければなりません。
それは設計者とのやり取りの中で、任せるところも、思い入れのあるところも、
また、提案されるものを了解したり承認するのも含めてですから、しっかり自分と向き合うことになります。
仕事や目の前の雑事に振り回されがちな日常ですが、
家をつくるということは、思い立ったその日から心の引き出しを開けて自分探しが始まる時です。

家づくりは技術的な裏付けや様々なノウハも必要ですが、ポイントとなるのは
設計者と住ま手のそれまで培われた感性が融合され、形成されていく事です。
そして住み続けて行く間に自分の昔の心象にフィードバックして豊かさを増幅させます。
家づくりをこの様な角度で考えられる事を心の隅においてみてはいかがでしょう。


 
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