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 『家づくりの会 連載コラム』


 013 森の家 その1

川鍋智子/川鍋智子建築設計室

森のような家が、私にとって理想的な家だ。
森には、相反するものが同時に存在する。
暗がりと、降りそそぐ光りがあり、隠れられるような狭い部分と、ぱっと視線が抜ける開放的な部分がある。
また、散歩をしたくなる要素がある。
ぐるぐると廻ることができたり、平らな地面とゆるやかな傾斜の部分があり、歩きまわるのにリズムが生まれる。
木の陰で見えない向こう側に興味がそそられる。
木の葉を天井に見立てれば、天井が高く、のびのびできる。
このような家を森の家と呼びたい。

こんな事を考えるようになったのは、
子供のころの環境が関係していると思える。
かつて、松林や田んぼが私の家の一部であった。
その頃のことを思い出してみたい。

上野から常磐線に乗り、柏で東武野田線に乗り換え、江戸川台で降りる。
この新興住宅地のはずれに私の家があった。

敷地の北側に舗装されていない2メートル幅の道路を挟み、
松林が広がり、松林を通り抜け、斜面を降りると、さらに田んぼが広がっていた。

家は公団が建てた中廊下式の平家で、土地が200坪あり、家が小さいので、庭が広かった。
家のキッチンは居間でもあったが、ダイニングテーブルが置いてあるだけだった。
この部屋の向かい側が子供の部屋で、家にいるときは、ほとんどの時間をこの2つの部屋で過ごした。
キッチンには勝手口がついていて、夏、ドアを開けておくと、涼しい風が抜けた。
冬はここに灯油ストーブを置き、雪の日は手袋を並べて乾かした。

この家と庭と松林と田んぼが私の子供の頃の遊び場であった。
庭の片隅に雑草園を石で囲ってつくり、道路の横に生えている珍しいと思われる雑草を引っこ抜いてきて、
わざわざ植えて、しばらく水をやって育てたりした。
松林では仮面ライダーごっこをした。松の木が敵のショッカーのつもりだ。幹を次々と蹴って歩く。
毎春、隣のおばあちゃんと田んぼでセリを摘んだ。
摘んでは、田んぼの中を流れる水でセリについた土を落とす。このくり返しが好きで夢中になり、
摘み過ぎて料理するのが大変だ、とよく怒られた。

松林や田んぼは楽しい遊び場であったけれど、夜、林の前を歩くのは恐くて仕方がなかった。
真っ暗闇だ。暗くなって家に帰る時はわざわざ遠回りをして、林の前を歩かないようにした。
杉の木が一本だけ松に混ざって家の近くに生えていた。
杉には油が多く含まれ雷で火事になりやすいと聞いていたし、葉のはえ方が幽霊のようで恐かった。
(つづく)


 
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