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 『家づくりの会 連載コラム』


 012 家づくりは、街の歴史や文化づくり  その1

吉原健一/光風舎一級建築士事務所
     ―京都の町屋に住んだ経験から、大きな視点で考えた家づくりこそ大切だと思う―

京都で生まれ、子供の頃京都御所向かいの古い町屋に住んでいました。
表は京格子・犬矢来に瓦屋根、玄関横には“ばったり床几”普段は壁に掛かっていて、
必要に応じてバッタリと上げたり下げたりする長椅子のようなもの、ここでは夏の夕涼みをしたり、
近所の人が立ち話をしていました。(今ではほとんど使われていませんが…。)
格子戸をくぐると玄関土間〜台所〜坪庭を繋ぐ通り庭となっていて、
夏は玄関戸を開け放し、坪庭に水を撒くと気圧差で風が抜けるような仕組みになってました。
通り庭の横には、表の間・中の間・そして奥の間に繋がる坪庭、
夏は風が通る葦の建具に取替え涼をとり、冬は雪見障子とし庭を眺められました。
その先は、増築され続け迷路のようになっていて子供の探検の場所には最適でした。
間口2間奥行き25m位の典型的な「うなぎの寝床」でした。

実際そこでの暮らしはというと、もともと町屋は夏向けのつくりだから、冬はとことん冷える、
バリアフリーとは程遠く、部屋の中はどこも薄暗くて段差だらけ、建具や壁・屋根の手入れも結構大変、
設備的なものはほとんど無し。
地味で、古臭くて陰気な雰囲気…。
決して便利で快適な住まいとは言えませんでした。
しかし使いづらいのだけど妙に落着き、空間の変化や四季の移ろいが感じられ、
生活が楽しめたような気がしました。
その頃の空間体験は今でも鮮明に記憶に残っており、設計の仕事をするようになり、
とても貴重なものとなっています。

住まいのシステム化・標準化・経済効率性・利便性……という流れに押され、
日々美しい建築や文化習慣が消えて逝くような気がします。
京の町屋も例外ではありません。
もともと町屋は、町中に建っているため現代の生活や税金・建築の基準法との間にズレが生じてき、
維持していくのが難しくなってきています。
和の暮らしが好きじゃないと日々の手入れも大変です。
そして伝統的な意匠や暮らしの知恵を無視した性能優先の住宅やマンションが増えつつあります。
連続的な町屋の町並みに突然、ペラペラのメーカー住宅やピンク色輸入住宅が建ち始めています。
環境破壊、猥褻物陳列罪です。
建てる方にも住む人にも意識やモラルの低さを感じてしまい残念です。
保存地域内に建っている伝統的な町屋には行政の法的規制・補助等で守られているのですが、
ほとんどの割合を占める指定地域外の町屋は対象外です。

だからといって、昔の町屋をそのまま建てようとしても、やはり現代の暮らしとはズレがあり、
また今、同じ物を建てるとなると建設費もかなりな額になってしまい、あまり現実的ではないのでしょう。
断熱やバリアフリー・便 利な設備機器・防犯…等々性能的な部分は最低限必要だとは思いますが、
それらのみでは心地の良い住まいはつくることができません。
日々の暮らしに楽しみや余裕を持たせてくれる、豊かな空間の演出や
美しいデザイン構成/周りの環境との調和も欠かすことができない要素だと思います。
(つづく)


 
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