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 『家づくりの会 連載コラム』


 009 開放的な間取りの家 その2

浦岡健志/浦岡健志設計室

こういった家は、戦後、核家族化の進展と個人の尊重、という大きな波と歩調を合わせるようにして、
徐々に姿を消して行きました。
この波に応えることのできる家づくりの考え方とは? 

それは、家父長制に代表される前近代的な家族形態からの脱却を反映し、
それを包み入れる新しい、家のかたちを導くものでなければなりませんでした。
それまでの家では期待できなかった、部屋の独立性を確保すること。
それから、部屋の利用目的を明確にすること。
この二つの目標を視野に、食べること、寝ること、団欒をすること、
こういった、種類の違う目的に対して、それぞれ合理的に場所を決めて、家を造ってゆく考え方が定着します。

特に、個人の場所と、団欒の場所と明確に分けることが目指されました。
また、核家族が家の中でどのようなスタイルで生活するか、非常にたくさんの実地研究も行われました。
こうしてかつて一世を風靡したダイニングキッチンが発明され、しかるべき面積の個室や、団欒の場所の確保、
といった、今よくあるタイプの家の原型が出来上がったのです。
 
こういった経緯で生まれてきた間取りが、かつての間取りを駆逐してしまうほどの勢いで普及したのですから、
これは人々から待たれ、新しい生活に広く受け入れられた間取りと考えてよいでしょう。
ただ、今から思えば、新しい間取りは、かつてなかったものを実現したと同時に、
それまでは当たり前だった開放的な雰囲気、といったものを追いやってしまった観があります。
思うに、あらゆることが変革の対象となった大きな時代の流れが背景にありましたから、
かつての家、すなわち開放的で、どこで何をやってもよい代わりに、仕切りが極めて曖昧な家、に対する反動、
みたいなものも単純にあったことでしょう。
 
いずれにしても、戦後普及した間取りの考え方は、時代の流れをとらえ、
使いやすさ、生活しやすさを合理的に実現した一方、
開放感からくる気持ち良さをともすれば二の次に追いやってしまう傾向があります。
おそらく意識されることはないかも知れませんが、皆さんも間取りを見るとき、
こういった合理的な考え方を知らず知らずのうちに出発点にしているはずです。
しかしながら、その一方で、やはり広々とした開放感は捨てがたい、と強く思うでしょう。
 
そう、家は本来、使いやすさなどを実現する理性と、気持ち良さを実現する感性を、両輪で動員してつくるものです。
やや理性が勝った状態でスタートした戦後の間取りですが、
50年を経た今、ささやかな感性の反動が確かな動きとなって起こっているようです。


 
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