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 『家づくりの会 連載コラム』


 007 あなたにとって家ってなんですか?

菊池邦子/テリトプラン

設計者として家がその人や家族にとっていかに重要な存在かを口にすることは常のことであり、
それを信じていますが、その家は決して器としての家ではないのです。
私たちの仕事は器をつくることですが、器は中味によって 決まってきます。
住む人がどんな暮らし方をしたいか、また望んでいるかで 違ってきます。

30年近く設計に携わってきた今、思うことは、
住む人の暮らし方や望むことが一様ではなくなってきている
ということです。
ほんの数年前はこれが理想の家族像といえるものが在ったように思います。
「核家族」「ニューファ ミリー」という言葉でイメージできるような‥‥。

ところが今は、言葉を聞いてイメージを共有できる家族像は見当たりません。
これは個性の多様化、個人の尊重という意味では悪いことではないのかもしれませんが、
そこには家族との関係が抜け落ちているように思います。
小説家はそんな気配に敏感です。
村上龍の「最後の家族」、宮部みゆきの 「理由」、それぞれに家族の在り方を描き出しています。
そこに登場する家族は一つ屋根の下に住みながら気持ちは別々だったり、
血縁関係の全くない人達が家族風に暮らしていたり‥‥。
でも悲観することはありません。
これは新しい家族の在り方が生まれるための胎動期間なのです。

大江健三郎氏は、それを「ゆるやかな絆」という表現であらわしています。
「・・・・お互いの間を結んでいるものはあるとして、それはゆったりとしたロープのようで、いつも下向きに垂れている。
しかし必要な時には、どち らかがそれをわずかに引っぱって、相手に自分の方へやってきてもらう。
あるいはロープを手さぐりつつ、先方に近づいて行く。・・・・」
そのロープが結ばれている人達は、それぞれに「自立」した個人であること。

最近、氏は人の在り方を「自立=upstanding 」という言葉で表現されています。
聞き慣れた言葉ですが、それを深い意味で実行することはなかなか難しいことです。
でも、これは家族をつくっていくための基本になると思います。
これからの家族は「自立」した人間の集合でありたいのです。
それは家族からさらに社会へ、世界へと拡がっていく根本理念でもあるからです。

では「自立」した家族にとって家はどういう存在になるのでしょう?家の形は?
たぶんN室+ LDK という、 これまでの表現とは異なった家づくりができるようになるのではないでしょうか?
住む人がこんな風に暮らしたい、生きていきたいという思いがはっきりしているほど、
その器は独自性を持ってくるはずだからです。
 

家づくりを目指したら、まず家族の今をじっくり観てください。
私も住む人の立場で、我が家族を観たいと思っています。


 
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