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 『家づくりの会 連載コラム』


 005 長く住む その2

吉田はるみ/吉田建築設計室

「下宿屋プラン」もわるくない
玄関から個室へ直接行けるような間取りが「下宿屋プラン」と呼ばれ、避けるべき間取りであるという説があります。
家族のコミュニケーションをはかるために、居間や食堂からそれぞれの部屋に通じるような間取りに
すべきであるという考えですが、私の住まいはちょうどこの「下宿屋プラン」に該当します。

ある時、父が長期間の入院を余儀なくされたことがありました。
2階にはまだ二部屋しかなかった時代ですが、この一時期、私の家は下宿屋に変身したことがあります。
ちょうど私が横浜で暮らしていた期間に重なっていて、
この家には二人しかいなくなってしまうので下宿人を置くことが可能だったのです。
母がこの変化で得たものは、経済的利益ばかりではありませんでした。
このとき下宿した二人の女子学生のうちのひとりは郷里に帰って教師になったのですが、
上京の機会に時折立ち寄ってくれます。30年以上過ぎた今でも、母の若い友人です。
最近私も夕食を共にして、楽しいひとときを過ごしたことがありました。
彼女の口からあの頃ここで覚えた料理をよく作るという話がでて、
どうやら母は料理の手伝いなども下宿人にしてもらっていたらしいことが判明しました。
そういえば、私も横浜の下宿では、
頼まれもしないのに皿洗いなど担当して茶碗蒸しの蓋を割ってしまったこともあったっけ、と思い出しました。

こだわりを捨てて柔軟に考えよう
家の寿命をまっとうさせるのにいちばん必要なことは、
長く使おうという気持ちと固定概念にしばられない柔軟な考え方でしょう。

私の家の例を見るまでもなく、いずれ家族の変化に伴って、小さな家なら増改築が、大きな家なら改築が
必要になるかもしれません。でも日本の大工さんはまだまだ優秀です。
リフォームでかなりのことが可能です。
逆に家族が減って、広い家を持て余している人も結構います。
最近では増築に対して「減築」などという新語も聞こえてきました。

あらゆることがどんどん自由になり、住まいのあり方もさまざまに変化しています。
ひと昔前の下宿が今どうかはわかりませんが、最近の新聞では、
古い一軒家をまるごと借りて共同で住む若い人たちが増えてきたと報じています。
これまで標準所帯とされてきた夫婦と子供二人という家族構成が実は標準ではなく、
子育て期間終了後のほうが長いのだと私たちにはわかってしまいました。

いずれ気の合う友人たちと集まって住みたいという女性たちは、既婚、独身を問わず私のまわりにも大勢います。
「減築」のかわりに、友人たちと共同生活というのは難しいにしても、
一部を格安の家賃で元気のよい家族に貸せば防犯対策としても最強、
地域に解放する、ホームステイを受け入れるなど、別な方法はたくさんあります。

家づくりは、豊かな人間関係を築けるかもしれない良い機会です。

住宅には血縁の家族が住むものである、という固定観念を捨てて自由に考えれば、
いくらでも楽しく暮らせそうではありませんか。


 
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