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『家づくりの会 連載コラム』
002 家とは何か? その3
川口通正/川口通正建築研究所
その国の文化を創造する家が、多くの職人さんたちの並々ならぬ努力によって出来上がってきたことを思うと、
そう簡単に「物件」と呼ぶ訳にもいかないだろう。
私たちにとっての家は、家族の記憶を刻む思い出の空間として大事なものだ。
これからの住宅は、たとえ小さな家で狭くても、楽しく美しい暮らしができる工夫が盛り込まれていることが大切だ。
工場で生産された部品を組み立てて作った商品化住宅ではなく、現場で働く職人さんたちと
住宅の大好きな設計者、建主の愛情が注がれた手作りの家でありたい。
Sハウスの工場の話と関わるが、近年私たちの国では多くの住宅が短い年月で建て替えられている現状がある。
本来、家は何世代にもわたって住み継がれて地域の環境を創造する役割を担う。
日本では税金の制度が建築物の保存とかみ合わず、古い建物がなかなか残せない。
それが町の風景を駄目にしている。
日本でも英国のナショナルトラスト制度のように古い住宅をその場所で保存することによって、
納税の緩和を行うようになれば町はもっと美しくなる。
丁寧に作られたひとつひとつの住宅が長く残りそこに棲み続けられれば、
私たちの国の次世代への贈り物になり、財産になるのだ。
資源にも限りがあることを考えると、これ以上私たちの国でスクラップ・アンド・ビルドは許されない。
そのためには、そのような家づくりに心血を注げる情熱ある設計者が一人でも多く必要となり、
その養成も私たちにとっては急務だ。
住みにくい、建てにくいと言われる大都会の中でも、
建築家と建主と職人さんと素材産地の人々が上手に協力し合えば気持ちの良い家が実現できるはずだ。
近年国の住宅政策は、ほぼ内外不燃化のハウスメーカー寄りにシフトされ、木の好きな設計者には厳しい方向だ。
国の耐震性能向上や不燃化促進のPRもとても大切だが、木の国の家づくりにおける知恵の素晴らしさや美しさと
木材の活用方法を、子供たちやお年寄りなどを含めた多くの人々に正しく伝えることも重要なことだ。
たくさんの木を使わない家づくりは、森を殺し、林業をつぶし、私たちの国の先祖伝来の自然を奪う。
強いては、私たちの健康にも大きな影響を及ぼすことは、今は誰でも知っていることだ。
国全体の家づくりの方向は、今、思わぬ方向に向かっている。何とかしなくては‥‥。
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