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 『家づくりの会 連載コラム』


 002 家とは何か? その2

川口通正/川口通正建築研究所

この国の中で、住宅がたやすく売られ、そして簡単に買われる「商品」に格落ちしたのは、
いつの時点のどの段階に政治的な政策の間違えがあったのか。
そして、私たちの国の中で培われた文化や歴史を見捨てて、
風景を見苦しいものにしてしまうことを、いつ許してしまったのだろうか。
そのような原因がどこにあったかを振り返り追及することは、この20年間の「家づくりの会」運動の
大きな課題であった。
そして、そのことを考えて、それぞれの設計者が設計活動を行ってきたように思う。

そもそも、古くからこの国では普請(ふしん)つまり家を建てるということは、
もっとも大切な地域における文化遺産として残るような建物を作ることを念頭に置いてスタートしている。
そういう意味からしても、昔は小さな普通の家屋も一つ一つ丁寧に作られていた。
当時も今も変わらず、誰にとっても普請は大変な事業であったと思う。
家を頼む旦那たちは、棟梁という知識人である職人の親方に絶大なる信頼を置いて家の建築を委ねていた。
間取りや使い勝手や耐久性などを意見してもらっていた。
だから、素材も形態もある範囲に限られて、美しいということまでが任されていたようだ。
その結果として、棟梁とその下職たちの感性によって美しい町並みが作られた。

だからその場所に長い年月棲みこんで、その場所の記憶を自分たちの家族の歴史と重ねることで、
ひとりひとりの思い出にもしてきたと思う。
詩人の谷川俊太郎さんが20年前に語っていた言葉がある。

「ある一ヵ所に住むということが、
濁っている水が自然に沈殿していって、それが澄んでくることと同じ状態になるというのは、
自分の渇望が満たされて、「住む」と「澄む」が同根であるように重なってしまうのです。」

谷川さんは、同じ場所に住むことの中でしか生まれてこないものの大切さを訴えていた。

しかし残念なことに、私たちの住む、美しいとはとてもお世辞にもいえない町並みを見れば分かる通り、
今では人はいつも住む場所と家を変えている。
そして、家はテレビや車のように高いお金を払って買い替えるものと世の中では思われている。
町の不動産屋のカタログには「物件」と呼ばれて家が並べられている。
最近の都会の住宅地には余った土地は無く、密集して家と家の間はほとんどなくなってしまった。
その上、もう昔のような棟梁の存在は望めないので、現代の都会での家づくりは、
私たちのような、住宅と長い年月戦い続けている建築家と一緒に、
厳しい環境の中で考えなくてはならないことも多くなっている。

そういう状況の中で、構造的にしっかりした気候風土に対応できる耐久性の高い家。
人間の情緒や感性を生かした潤いのある家。
四季の変化と美しさを生かした生活としつらえのできる家。
そして、自然と対話できる家を勧めたい。
さらに付け加えれば、そのような家を作るのには昔の住宅にあった良さを取り入れていくことも良いだろう。
しかし、それがとても難しいことも事実だ。

                            (つづく)


 
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