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 『家づくりの会 連載コラム』


 002 家とは何か? その1

川口通正/川口通正建築研究所

何日か前の朝日新聞の日曜日の記事に、住宅メーカー大手のMホームが、
売上不振で2000人のリストラを実施するということが載っていたので読んでみた。
3月期の連結決算が91億5千万円の赤字が出るということらしい。
だから、リストラを実施して経営を維持するという話だ。
この記事を読んで何かが変だと思った。
逆に言うと、これだけのもの凄い赤字にならないとリストラをしないのだから、
赤字ではなかった時は相当儲かっていたということになるのではないだろうか。

一人一人にとって「大切な家族の家」は、このメーカーに信頼を置いて頼んだに違いない。
しかし新聞記事から察するところ、
その「家族のための家たち」は確実に企業に大きな利益をもたらすための商品に他ならず、
その利益の大半は有名女優のギャラに消え、工場や展示場の維持費に消え、
そして、高給取りのMホーム勤務のサラリーマン諸兄の給料に消えたと思われる。
それらの点からして、それなくしては商品としての家たちは、意味無しということであったようだ。

その何万軒もの家づくりに参加した2000人もの人々がその企業から居なくなるということも、
建てた家の築後の面倒を見ることを考えると驚きに近いことだ。 

そんな興味から、Mホームとは別のハウスメーカー大手であるSハウスの担当の人にお願いして、
数日後運良く茨城県にある関東工場を見せてもらうことにした。
このメーカーは鉄骨系を主流とし、最近では木造系にも進出してきている。
この関東工場は、その鉄骨系住宅の生産の場所だ。
最近では、後発である木質系の方の需要が伸びているという。
東京ドームの数倍の広さがある工場の中に入って、驚いたことは働いている人が極めて少ないことであった。
オートメーション化で、金属溶接などは生産ロボットの仕事であった。
そしてそのようなことだから、家を作っているようにはとても見えず、
やはり溶接の火花を散らしている自動車工場にしか私には見えなかった。

ここで、年間800軒〜1000軒の関東地方の住宅を生産し出荷しているらしい。
邸別と称して積み上げられた部品に貼られたシールには、「タナカ・カクエイ・テイ」とカタカナ表示されている。
これは本当に家なのか。
透明ビニールにぐるぐる巻きの包帯のように巻かれた製品は、いったい何なのか。
私にはどうしても家には思えず、車か家電製品のようであった。

Sハウスでは、沖縄を除く日本国内で一年間に合計20,000棟の家を売っている。
もちろん、需要があるので供給が必要なのだ。
でも、確実に何かが変だ。
Sハウスの人によると、最近では住宅展示場も客足が遠のいていく一方で、
一部の地域では閉鎖するところも出てきているらしい。
家を建てるための情報の収集方法が大きく変わってきているのだ。
時代の変化は、それぞれの家族の生き様を反映し、ますます多様化の方向へと向かっているのだろうか。
それともやはり本当の職人が作る家づくりによる家が欲しくなったのか。
今、日本国民は家の伝統や文化をどう考えているのだろうか。
(つづく)


 
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