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 『建築家と家を建てることについての10章』 written by 中原洋

 07 建てられない土地に家を建てる試み


はじめて土地を買うというのは不安なものです。
家が建たない土地という物が現実にあったりするからです。
法律的な問題は調べれば分かります。
すくなくとも専門家である建築家に依頼すればすむことです。
しかし、技術的に無理といわれたら。

その家は路地の奥にありました。
道路に接地する巾は2メートルぎりぎりの旗竿状の土地。土地は小さい。
しかも家そのものは、3階建てでないと必要な広さを確保できない。
結局、木造は無理で鉄骨にせざるを得なくなりました。

問題は狭いその土地で重い鉄骨が組み上げられるかどうかでした。
機械が入れられないので人力で。いくつかの工務店がこれはできない、無理と断ったそうです。

なにしろ重量1トン弱の鉄骨を4本。
10メートルの高さに上げて鉄の柱に組み合わせていくというものです。

この仕事をなさった鳶の方にもお目に掛かりました。
「親父が居なかったらこの仕事はできなかった」とかれは教えてくれました。
昔の伝統の技術。機械のなかった時代の社寺の大きな梁を上げる技術を使ったということです。
鳶の親方ですら40年前にやっただけという技術。

太く長い1本の柱を立てて、鉄の鎖、滑車を使って、持ち上げていく。
柱は1本。
なぜ1本かと言えば、前後左右に傾けながら必要な場所へ鉄骨をもっていくため。

この仕事を請け負った工務店の友人が
「これでいままで建てられなかった土地が救える」と言いました。
現場の人だけがもつ偉大な知恵と技術です。

それにしてもこういうことができる人が居なかったらどうなっていたか。


 
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